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国内IR誘致候補地のひとつ「ハウステンボス」の売却でIR誘致への影響はある?

国内IR誘致候補地のひとつ「ハウステンボス」の売却でIR誘致への影響はある?

ハウステンボスとは

長崎県佐世保市にある「ハウステンボス」は1982年にオランダをルーツに持ったテーマパークとして誕生しました。このヨーロッパの街をテーマにしたハウステンボス、総敷地面積はディズニーリゾートの約1.5倍にものぼり、モナコ公国とほぼ同じ広さを持つ「日本一広いテーマパーク」です。

ハウステンボスの経営状況

2000億円という初期費用への投資が大きかったことや、九州の西端で大都市からは離れている立地が影響したためか、2003年に会社更生法の適用申請を行っています。野村プリンシパル・ファイナンス(現在は解散)の支援を受けたものの上手くいかず、2010年地元から要請された形でHISが再建に乗り出します。再建から半年で黒字化に成功したものの、2020年新型コロナウイルスによる影響で休園・時短営業をやむなく行い、同年の入場者数は前年の半数近くに落ち込む結果となりました。コロナ禍のHISは、海外旅行をはじめ、ホテル、電力小売り事業等でもかなりの痛手を受けこともあり、以前から話に上がっていたハウステンボス売却を決断。そして8月30日、HISはハウステンボスをアジア系投資ファンド・PAGに売却することを発表し増田。それは奇しくも日本の経営を代表する、たぐいまれな経営手腕と哲学を持ち「新・経営の神様」の稲盛和夫氏が永眠されてからすぐの事でした。

ハウステンボス売却によるIR誘致への影響

IRとは

IRとはIntegrated Resort(統合型リゾート)の略で、ランドカジノやホテル、劇場、ショッピングモールなどのエンターテインメント施設から国際会議場、展示場のビジネス施設まで多くの要素がひとところに集結する複合施設。2016年12月に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR整備推進法案)」通称「カジノ法案」が成立し、現在誘致を狙う各地域がIR導入に向けて動いています。そのひとつが長崎県のハウステンボス。IR誘致区域整備計画案によると、IRの延べ床面積は642,100㎡で、カジノに利用される区画は18,106㎡。バカラなどテーブルゲームを約400台、スロットなどの電子ゲームは約3千台。コンベンション施設は、国際会議場部分に約1万4400人、展示場部分に約1万3140人を収容。宿泊施設はタワーホテルや旅館など4タイプあり、計約2500室を備えています。日本の魅力を発信する「ジャパンハウス」や医療を提供するメディカルモール、ショッピングモールも整備する計画です。

IR誘致への影響

結論から言うと、今のところハウステンボス売却によるIR誘致への影響は出ていません。アジア系投資ファンド・PAGからしてもIR誘致に成功すれば集客への起爆剤になり得ます。長崎県側とすれば、ハウステンボスが外資企業のかじ取りで再び成長軌道に乗る期待と、IR誘致による国内外からのカジノ施設利用客の見込みへの期待も大きいはずです。売却によるIR誘致への影響はないものの、実現には不透明感も漂います。9月に入り、IRをめぐり長崎市民団体が初の住民訴訟を起こしているのも事実。今後もどうやら正念場は続きそうです。